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【税金入門 vol.28】インボイス制度 — 登録判断と2割特例

# 税金入門# 消費税

インボイス制度で何が変わったのか

2023年10月に始まった適格請求書等保存方式(インボイス制度)。フリーランスにとっては大きな影響がある制度です。

一言でまとめると:インボイス(適格請求書)を発行できない事業者からの仕入れは、取引先が消費税の仕入税額控除を受けられなくなる

つまり、免税事業者のままだと取引先に不利益が生じるため、「インボイスを発行できるようにしてほしい」と言われるケースが増えています。

免税事業者が直面する選択

【税金入門 vol.27】免税事業者と課税事業者 — 1,000万円の判定基準で解説したとおり、売上1,000万円以下のフリーランスは免税事業者です。

インボイス制度の導入で、免税事業者は以下の選択を迫られます。

選択肢1: インボイス登録する(課税事業者になる)

  • インボイスを発行できるようになる
  • 取引先は仕入税額控除を受けられる
  • 消費税の申告・納付義務が発生する

選択肢2: 登録しない(免税事業者のまま)

  • インボイスを発行できない
  • 取引先は仕入税額控除を受けられない → 取引先の負担が増える
  • 消費税の納付義務はない
  • ただし、取引先から値下げ交渉や取引停止のリスクがある

登録すべきかの判断フロー

全員が登録すべきわけではありません。以下のフローで判断してみてください。

1
取引先は法人(企業)ですか?
はい
→ Q2へ
いいえ
登録不要の可能性が高い
2
「インボイスを出して」と言われた?
はい
登録を検討すべき
いいえ
→ Q3へ
3
今後、法人との取引を増やしたい?
はい
登録を検討すべき
いいえ
登録不要の可能性が高い

Q1: 取引先は法人(企業)ですか?

  • はい → Q2へ
  • いいえ(個人消費者が主な顧客) → 登録不要の可能性が高い

Q2: 取引先から「インボイスを出してほしい」と言われていますか?

  • はい → 登録を検討すべき
  • いいえ → Q3へ

Q3: 今後、法人との取引を増やしたいですか?

  • はい → 登録を検討すべき
  • いいえ → 登録不要の可能性が高い

個人向けのサービス(個人のお客さんに直接販売するBtoC事業)は、取引先が仕入税額控除を使わないので、インボイス登録のメリットがほぼありません。

2割特例 — インボイス登録した免税事業者への救済措置

インボイス登録をして免税事業者から課税事業者になった場合、2割特例が使えます。

通常の計算(売上の消費税 − 仕入の消費税)よりも簡単で、しかも負担が軽くなるケースが多いです。

売上500万円(税抜)の場合の消費税納付額
本則課税
売上の消費税50万
50万 − 仕入分
簡易課税
50万 × (1−50%)
25万円
おすすめ
2割特例
50万 × 20%
10万円
2割特例なら簡易課税より 15万円安い (2026年9月まで)

具体例

売上500万円(税抜)のフリーランスの場合:

方法消費税の納付額
本則課税50万 − 仕入の消費税
簡易課税(第5種・50%)50万 × 50% = 25万円
2割特例50万 × 20% = 10万円

2割特例なら年間10万円。簡易課税の25万円より15万円も安い。自分の売上だとどのくらいの差になるか、シミュレーターで確認してみてください。

2割特例の適用条件

  • インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった人が対象
  • 2023年10月〜2026年9月の属する課税期間まで適用可能
  • 事前届出は不要。確定申告時に選択するだけ

2026年9月で終了する時限措置なので、永久に使えるわけではありません。終了後は簡易課税か本則課税を選ぶ必要があります。

簡易課税との使い分け

2割特例と簡易課税、どっちが得かは業種と仕入の割合で変わります。

業種簡易課税のみなし仕入率2割特例との比較
ITフリーランス(第5種)50% → 納付は売上消費税の50%2割特例のほうが得
デザイナー(第5種)50% → 同上2割特例のほうが得
飲食店(第4種)60% → 納付は売上消費税の40%2割特例のほうが得
小売業(第2種)80% → 納付は売上消費税の20%ほぼ同額
卸売業(第1種)90% → 納付は売上消費税の10%簡易課税のほうが得

ITフリーランスやデザイナーなど仕入れが少ない業種は、2割特例が使えるうちは2割特例一択です。

経過措置 — 段階的な移行期間

インボイス制度には経過措置があります。免税事業者からの仕入れに対する仕入税額控除が、段階的に縮小されていきます。

期間控除できる割合
2023年10月〜2026年9月80%
2026年10月〜2029年9月50%
2029年10月〜0%

2029年10月以降は、インボイスなしの取引では仕入税額控除が一切できなくなります。取引先にとっての影響は年々大きくなるので、「今は大丈夫でも将来的には登録が必要になるかもしれない」という視点は持っておきましょう。

経過措置の期間管理や消費税の区分経理は、正直手作業だとミスしやすいところ。会計ソフトならインボイス対応も含めて自動処理してくれます。

よくある間違い

「インボイス登録は義務」

義務ではありません。登録するかどうかは事業者の任意です。ただし登録しないと取引先に不利益が生じるため、実質的に「登録せざるを得ない」ケースは多いです。

「2割特例はずっと使える」

2026年9月の属する課税期間までの時限措置です。終了後は簡易課税か本則課税を選ぶことになります。2割特例が終わる前に、簡易課税の届出を出しておくことをおすすめします。

「免税事業者は消費税を請求できなくなった」

請求すること自体は可能です。ただし、取引先がその消費税分の仕入税額控除を受けられないため、「消費税分を値引きしてほしい」と言われる可能性はあります。

この記事のまとめ

  • インボイスがないと取引先が仕入税額控除を受けられない
  • BtoBのフリーランスは登録を検討すべき。BtoCなら登録不要の可能性が高い
  • 登録したら2割特例(売上消費税の20%を納付)が使える。2026年9月まで
  • ITフリーランスは2割特例が終わったら簡易課税(みなし仕入率50%)へ
  • 経過措置は2029年9月で終了。それ以降はインボイスなしの控除は0%

次の記事では、フリーランスに関わるもう1つの税金「個人事業税」を解説します。


※ 本記事は2025年分の税制に基づく概要説明です。インボイス制度の適用判断は個別の事業内容により異なります。正確な判断は税理士にご相談ください。

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