【税金入門 vol.10】基本の所得控除 — 基礎控除・社保控除・配偶者控除・扶養控除
控除の「土台」になる4つ
【税金入門 vol.9】所得控除と税額控除の違い — 「所得から引く」vs「税金から引く」で、所得控除は15種類あると書きました。
今回はそのうち、ほぼ全員に関係する4つの基本控除を掘り下げます。
- 基礎控除 — 全員に適用される控除
- 社会保険料控除 — 払った社保の全額が控除
- 配偶者控除 — 配偶者の所得が少ない場合
- 扶養控除 — 16歳以上の扶養親族がいる場合
この4つだけで、会社員の所得控除の大半を占めるケースは珍しくありません。年末調整の書類で「何が引かれているか」を読めるようになるための、最低限の知識がこれです。
基礎控除 — 全員に適用、でも金額は一律じゃない
基礎控除は、所得がある人なら誰でも使える控除です。申請不要で自動適用されます。
2025年分(令和7年分)は税制改正の暫定措置で、従来の48万円から引き上げられています。所得に応じて段階的に変わる仕組みです。
所得税の基礎控除(2025年分・暫定措置)
| 合計所得金額 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 |
| 336万円以下 | 88万円 |
| 489万円以下 | 68万円 |
| 655万円以下 | 63万円 |
| 2,350万円以下 | 58万円 |
| 2,400万円以下 | 48万円 |
| 2,450万円以下 | 32万円 |
| 2,500万円以下 | 16万円 |
| 2,500万円超 | 0円 |
注意点が2つあります。
1つめ:この金額は暫定措置。2025年・2026年分のみ適用で、2027年分以降は合計所得2,350万円以下で一律58万円に戻る予定。「95万円」や「88万円」がずっと続くわけではありません。
2つめ:所得2,500万円を超えると基礎控除はゼロになる。年収ではなく「合計所得金額」が判定基準なので、会社員なら年収2,695万円あたりが目安。該当する人は多くないですが、ストックオプションや不動産所得がある場合は注意が必要です。
住民税の基礎控除
住民税の基礎控除は所得税とは別の金額で、43万円(合計所得2,400万円以下の場合)です。所得税の暫定措置とは連動していないので、混同しないようにしてください。
社会保険料控除 — 払った全額がそのまま控除
社会保険料控除は、その年に支払った社会保険料の全額が所得から引ける控除です。上限はありません。
対象になる社会保険料
- 健康保険料(協会けんぽ、組合健保、国民健康保険)
- 厚生年金保険料
- 国民年金保険料
- 介護保険料
- 雇用保険料
会社員の場合、健康保険と厚生年金は給与天引きで自動的に控除されているので、年末調整でも特に何もしなくてOKです。
金額の目安
年収ごとの社会保険料の目安は以下のとおりです(会社員・東京都・40歳未満の概算)。
| 年収 | 社会保険料(年間) | 社保控除の節税効果(税率20%+住民税10%) |
|---|---|---|
| 300万円 | 約43万円 | 約13万円 |
| 500万円 | 約73万円 | 約22万円 |
| 700万円 | 約103万円 | 約31万円 |
年収500万円の会社員なら、社会保険料だけで73万円の所得控除になります。税率20%+住民税10%で計算すると約22万円の節税効果です。地味に見えますが、金額としてはかなり大きいんですよね。
フリーランスの場合
フリーランスが払う国民健康保険料と国民年金保険料も、もちろん社会保険料控除の対象です。
国民年金: 17,510円 × 12か月 = 210,120円/年(2025年度)
国保: 所得に応じて変動(上限109万円)
ポイントは確定申告で自分で申告する必要があることです。会社員と違って天引きされないぶん、申告を忘れると控除がまるごと消えます。
もうひとつ。家族の分を代わりに払った場合も控除できます。たとえば子どもの国民年金を親が払えば、親の社会保険料控除に加算できます。子どもが学生で所得がなければ、税率の高い親側で控除したほうが節税効果は大きいです。こうした控除の最適化に加えてマイクロ法人で社保を切り替えれば、社会保険料そのものを圧縮できます。
配偶者控除 — 配偶者の所得58万円以下で適用
配偶者控除は、配偶者の合計所得金額が58万円以下の場合に適用される控除です。
基本の金額
| 納税者の合計所得 | 所得税の配偶者控除 | 住民税の配偶者控除 |
|---|---|---|
| 900万円以下 | 38万円 | 33万円 |
| 950万円以下 | 26万円 | 22万円 |
| 1,000万円以下 | 13万円 | 11万円 |
| 1,000万円超 | 適用なし | 適用なし |
適用条件
- 法律上の婚姻関係があること(内縁関係は不可)
- 配偶者の合計所得金額が58万円以下
- 納税者の合計所得金額が1,000万円以下
- 配偶者が青色事業専従者給与を受けていないこと
「合計所得58万円以下」をパート収入に換算すると、2025年分の給与所得控除65万円を足して年収123万円以下(改正前は103万円以下)です。いわゆる「103万の壁」が実質的に動いたのはこの改正によるものです。
配偶者特別控除 — 58万円を超えても段階的に使える
配偶者の所得が58万円を超えても、133万円以下なら配偶者特別控除で段階的にカバーされます。
| 配偶者の合計所得 | 所得税の控除額(納税者の所得900万以下) |
|---|---|
| 58万円超〜95万円 | 38万円 |
| 95万超〜100万円 | 36万円 |
| 100万超〜105万円 | 31万円 |
| 105万超〜110万円 | 26万円 |
| 110万超〜115万円 | 21万円 |
| 115万超〜120万円 | 16万円 |
| 120万超〜125万円 | 11万円 |
| 125万超〜130万円 | 6万円 |
| 130万超〜133万円 | 3万円 |
| 133万円超 | 0円 |
所得95万円(パート年収160万円程度)までなら配偶者控除と同額の38万円です。パートで少し稼いだだけで控除がゼロになるわけではありません。ここを知らずに「103万円を超えたら損」と思い込んでいる人はかなり多いです。
ただし、配偶者の年収が増えると社会保険の扶養(年収130万円の壁)を外れる問題が別に出てきます。税金上の壁と社保上の壁は別物で、混同するとやっかいです。社保の話は後の章で改めて取り上げます。
扶養控除 — 16歳以上の親族が対象
扶養控除は、生計を一にする扶養親族(合計所得58万円以下)がいる場合に使える控除です。年齢区分で金額が変わります。
年齢別の控除額
| 区分 | 年齢 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
|---|---|---|---|
| 一般の扶養親族 | 16歳〜18歳 | 38万円 | 33万円 |
| 特定扶養親族 | 19歳〜22歳 | 63万円 | 45万円 |
| 一般の扶養親族 | 23歳〜69歳 | 38万円 | 33万円 |
| 老人扶養親族(同居) | 70歳以上 | 58万円 | 45万円 |
| 老人扶養親族(別居) | 70歳以上 | 48万円 | 38万円 |
注目は「特定扶養親族」の63万円
19歳〜22歳の子どもがいると、控除額は一気に63万円に跳ね上がります。大学生の子どもにかかる費用への配慮として設けられた区分です。
税率20%+住民税10%で計算すると:
一般: 38万円 × 30% = 節税約11.4万円
特定: 63万円 × 30% = 節税約18.9万円
特定扶養控除は一般の1.66倍です。大学生の子どもがいる世帯は要チェックです。
16歳未満の子どもには扶養控除がない
「子どもがいるのに扶養控除が使えない」。これ、よく混乱するポイントです。16歳未満の子どもは扶養控除の対象外です。
理由は、児童手当が支給されているからです。控除と手当で二重の優遇にならないよう、2011年に16歳未満の扶養控除は廃止されました。
別居の親も扶養に入れられる
意外と見落とされがちなのが、別居している親を扶養に入れるパターンです。
条件は3つ:
- 生計を一にしていること(仕送りをしていればOK)
- 親の合計所得が58万円以下(65歳以上で年金収入のみなら168万円以下、64歳以下なら118万円以下)
- 他の人の扶養になっていないこと
70歳以上の別居の親なら48万円、同居なら58万円の控除です。年金暮らしの親の所得が少なければ、子ども側で扶養控除を使えば世帯全体の税負担が軽くなります。ここは盲点になりやすいので、親の年金額を一度確認してみる価値はあります。
4つの控除で年収500万円の会社員はいくら引けるか
具体例で見てみましょう。年収500万円、配偶者あり(専業主婦)、子ども1人(17歳)の会社員です。
| 控除 | 金額 |
|---|---|
| 基礎控除 | 68万円(合計所得356万円 → 489万以下の区分) |
| 社会保険料控除 | 約73万円 |
| 配偶者控除 | 38万円 |
| 扶養控除 | 38万円(一般) |
| 合計 | 約217万円 |
年収500万円から給与所得控除144万円を引いて所得356万円です。さらに所得控除217万円を引くと:
課税所得 = 356万 − 217万 = 139万円
所得税 = 139万 × 5% = 69,500円
年収500万円に対して所得税は約7万円です。実効税率わずか1.4%。基本の4控除だけでここまで課税所得が圧縮されるのは、結構インパクトがあります。
家族構成による税額の違いは、シミュレーターで年収と扶養人数を入力すれば確認できます。独身で扶養なしの場合と比べると:
独身: 課税所得 = 356万 − (68万+73万) = 215万円
所得税 = 215万 × 10% − 97,500 = 117,500円
配偶者控除と扶養控除の有無で所得税が約4.8万円変わります。住民税を合わせると年間約12万円の差です。
※ 上記の計算例では復興特別所得税(2.1%)は省略しています。実際の所得税額には復興特別所得税が加算されます。
フリーランスで同じ家族構成なら、マイクロ法人と組み合わせて所得を分散させれば、これらの控除の恩恵をさらに引き出せます。逆に言えば、法人化を検討しないまま確定申告を続けると、毎年数十万円を余計に払い続けている可能性があります。どのくらい変わるか、シミュレーターに数字を入れてみてください。
この記事のまとめ
- 基礎控除は2025年暫定措置で最大95万円。所得に応じて段階的に変動
- 社会保険料控除は払った全額が控除。上限なし。申告忘れに注意
- 配偶者控除は配偶者の所得58万円以下で最大38万円。特別控除で133万まで段階適用
- 扶養控除は16歳以上が対象。19〜22歳の特定扶養は63万円と手厚い
- 別居の親も扶養に入れられる。仕送りしていれば条件を満たす
次の記事では、「実質2,000円」の仕組みを持つふるさと納税を掘り下げます。上限額の計算方法、ワンストップ特例と確定申告の使い分けを解説します。
※ 本記事は2025年分の税制に基づく概要説明です。基礎控除の暫定措置は令和7年・8年分のみ適用予定。控除額・適用条件は個人の状況により異なります。正確な判断は税理士にご相談ください。
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