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【税金入門 vol.14】iDeCo・小規模企業共済 — 全額所得控除の威力と出口の課税

# 税金入門# 控除

「掛金が全額所得控除」の意味

iDeCoと小規模企業共済。名前は違いますが、税金の面ではどちらも同じ構造 — 掛金の全額が所得控除になります

【税金入門 vol.9】所得控除と税額控除の違い — 「所得から引く」vs「税金から引く」で解説したとおり、所得控除は「控除額×税率」が節税になります。iDeCoに毎月23,000円(年間276,000円)を積み立てている会社員で税率20%なら:

276,000円 × 20%(所得税)= 55,200円
276,000円 × 10%(住民税)= 27,600円
合計 年間約82,800円の節税(※復興特別所得税2.1%を除いた概算)

これが30年続けば約250万円です。掛金を払っているだけで税金が減ります。生命保険料控除のように上限が4万円とか5万円に制限されるわけでもありません。全額が所得控除になります。これがiDeCoと小規模企業共済の最大の特徴です。

生命保険料控除
上限あり
控除額
上限 4万円
年間節税 約8,000円(税率20%)
iDeCo(会社員)
全額が所得控除
控除額
全額 27.6万円
年間節税 約8.3万円(税率20%+住民税)
全額所得控除 → 節税効果は 約10倍 の差

iDeCo(個人型確定拠出年金)

仕組み

自分で掛金を出して、自分で運用して、60歳以降に受け取る年金制度です。「自分で作る年金」と言われるのはこの構造のためです。

運用先は自分で選びます。投資信託、定期預金、保険商品などです。元本保証の商品もありますが、運用益が非課税というメリットを活かすなら投資信託が選ばれることが多いです。

3つの税制メリット

  1. 掛金が全額所得控除 — さっき説明したとおり
  2. 運用益が非課税 — 通常は利益に20.315%の税金がかかるが、iDeCoの中なら非課税
  3. 受取時に退職所得控除・公的年金等控除が使える — ここが「出口課税」のポイント(後述)

掛金の上限額

立場によってかなり差があります。フリーランスが圧倒的に有利です。

加入者の区分月額上限年間上限
自営業者・フリーランス(第1号)68,000円816,000円
会社員(企業年金なし)23,000円276,000円
会社員(企業型DCのみ)※20,000円240,000円
会社員(DB等あり)12,000円144,000円
公務員20,000円240,000円
専業主婦・主夫(第3号)23,000円276,000円

※ 企業型DC加入者は事業主掛金との合計が月55,000円以内です。事業主掛金が多い場合はiDeCo枠が縮小されます。

フリーランスは月68,000円で年間816,000円です。所得税率30%+住民税10%で年間約33万円の節税になります。会社員の3倍近い掛金を出せるので、節税効果も大きいです。自分の所得税率が何%か分からない方は、ZeiSimのシミュレーターで確認できます。

ただしフリーランスの68,000円は国民年金基金や付加年金との合算枠です。これらに加入している場合はその分だけiDeCoの上限が下がります。

注意点

  • 60歳まで原則引き出せない — これが最大のデメリットです。急な資金需要には対応できません
  • 口座管理手数料がかかる — 国民年金基金連合会105円+信託銀行66円=月171円(税込)に加え、金融機関の手数料が毎月発生します
  • 加入時の手数料 — 初回2,829円(一律)
  • 転職時は移換手続きが必要 — 会社員↔フリーランスで区分が変わるため

小規模企業共済

仕組み

小規模企業の経営者やフリーランスのための「退職金制度」です。中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)が運営しています。

iDeCoとの違いは、自分で運用しないことです。掛金を納めれば、共済事由(廃業・退職等)に応じて共済金が支払われます。運用リスクを負わない代わりに、リターンも予定利率で決まっています。

掛金

月額1,000円〜70,000円(500円刻み)。年間最大840,000円

iDeCoと同じく全額が所得控除になります。両方に上限まで加入すれば、フリーランスは年間約166万円を所得控除にできます。

加入できる人

  • 常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主
  • 上記の企業の役員
  • フリーランス(事業所得がある個人)

会社員は加入できません。これはフリーランスや小規模事業者だけの制度です。

共済金の種類

共済事由共済金税法上の扱い
個人事業の廃業共済金A退職所得
老齢給付(65歳以上・180か月以上)共済金B退職所得
法人成りして役員にならなかった共済金A退職所得
任意解約解約手当金一時所得

ポイントは任意解約だと一時所得になることです。退職所得のほうが税制上はるかに有利(後述)なので、できれば廃業・老齢給付で受け取りたいところです。

注意点

  • 加入後12か月未満の解約は掛け捨て — 掛金は1円も戻ってきません
  • 任意解約は240か月(20年)未満だと元本割れ — 掛金総額を下回ります。短期で辞める前提なら入らないほうがいいです
  • 貸付制度がある — iDeCoと違って、掛金の範囲内で事業資金の貸付を受けられます。資金繰りに不安があるフリーランスには心強い制度です

「出口課税」— 受取時の税金を理解する

iDeCoも小規模企業共済も「入口で非課税、出口で課税」という構造です。掛金を払うときは所得控除で税金が減りますが、受け取るときには税金がかかります。

じゃあ結局プラマイゼロなのか? そうではありません。出口で使える控除が大きいので、入口の節税分がまるまる取られるわけではありません。

一時金で受け取る場合 → 退職所得控除

一括で受け取ると「退職所得」として扱われます。退職所得は税制上かなり優遇されています。

退職所得 = (収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2

退職所得控除額

勤続年数(=加入年数)控除額
20年以下40万円 × 勤続年数
20年超800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

30年加入していれば退職所得控除は1,500万円(800万 + 70万×10年)です。しかも控除後の金額がさらに1/2になります。

具体例

iDeCoに30年加入、一時金1,200万円を受け取る場合:

退職所得控除 = 800万 + 70万 × 10年 = 1,500万円
退職所得 = (1,200万 − 1,500万)× 1/2 = 0円

1,200万円受け取って税金ゼロです。30年間の掛金での節税額(約250万円)はまるまる手元に残ります。

入口(30年間の掛金)
27.6万円 × 30年 × 税率30%
節税額
約250万円
出口(一時金受取)
1,200万円 − 退職所得控除1,500万円
課税額
0円
退職所得控除の枠内
手元に残る節税額: 約250万円

年金で受け取る場合 → 公的年金等控除

分割で受け取ると「雑所得(公的年金等)」として扱われます。公的年金等控除が適用されますが、他の年金(厚生年金・国民年金)と合算されるので、退職所得控除ほどの優遇にはならないことが多いです。

一時金 vs 年金 — どっちが得か

一般的には一時金のほうが税制上有利なケースが多いです。退職所得控除の枠内に収まれば税金ゼロですし、1/2課税もあります。ただし:

  • 受取額が退職所得控除を大きく超える場合は、一部を年金にする「併給」も選択肢
  • 会社からの退職金とiDeCoの一時金が重なると、退職所得控除の計算が複雑になります(同じ年に受け取ると控除額が通算されます)

ここは金額次第なので、受取時に具体的にシミュレーションするのがベストです。

iDeCo vs 小規模企業共済 — どっちを優先すべきか

iDeCo小規模企業共済
対象者ほぼ全員フリーランス・小規模経営者のみ
掛金上限(フリーランス)月68,000円月70,000円
運用自分で選ぶ中小機構が運用
引き出し60歳まで不可貸付制度あり
受取時退職所得 or 年金退職所得 or 一時所得
運用重視ならこっち
iDeCo
上限月 68,000円
運用益非課税
引き出し60歳まで不可
流動性重視ならこっち
小規模企業共済
上限月 70,000円
運用リスクなし
引き出し貸付制度あり
余裕があるなら両方 → 年間約166万円の所得控除

会社員はiDeCo一択です(小規模企業共済には入れません)。

フリーランスは両方使えます。どちらを優先するかは状況次第ですが、ひとつの考え方:

  • 資金の流動性を重視 → 小規模企業共済(貸付制度がある)
  • 運用益の非課税を重視 → iDeCo(投資信託で長期運用)
  • 節税額を最大化 → 両方に上限まで加入(年間約166万円の所得控除)

余裕があるなら両方やるのが正解です。節税額が最大化できるだけでなく、将来の受取方法の選択肢も広がります。

よくある間違い

「iDeCoは得しかない」

掛金が全額所得控除になるのは事実です。ただ、60歳まで引き出せないというのは想像以上に大きい制約です。手元資金に余裕がない状態で上限まで積み立てると、急な出費に対応できなくなります。まずは生活防衛資金(最低6か月分の生活費)を確保してからにしましょう。

「出口で課税されるから結局プラマイゼロ」

これは明確に間違いです。入口では所得税の最高税率(人によっては30〜45%)で節税できるのに対し、出口では退職所得控除+1/2課税で大幅に軽減されます。入口と出口で適用される税率が違うから、差額分が純粋な節税になります。税率20%で30年運用すれば、その差額は数十万円〜百万円単位になります。

「小規模企業共済はいつ解約しても大丈夫」

任意解約は240か月(20年)未満だと元本割れします。12か月未満は掛け捨てです。「とりあえず入って、いらなくなったら解約すればいい」という考えだと損をします。加入するなら長期で続ける前提で検討しましょう。

iDeCoや小規模企業共済を始めるのが1年遅れるだけで、年間33万円以上の節税機会を失うことになります(フリーランス・所得税率30%の場合)。掛金の控除は確定申告で反映するので、帳簿づけの準備も合わせて進めておきましょう。

この記事のまとめ

  • iDeCoと小規模企業共済は掛金が全額所得控除 — 生命保険料控除のような上限なし
  • iDeCoは運用益も非課税。フリーランスは月68,000円まで
  • 小規模企業共済はフリーランス・小規模経営者限定。貸付制度がある
  • 受取時は退職所得控除が使える。30年加入なら1,500万円まで非課税
  • 出口で課税されても、入口と出口の税率差が純粋な節税になる
  • iDeCoは60歳まで引き出し不可。生活防衛資金を確保してから

これで第3章「控除」は完了です。次の第4章では住民税に進みます。所得割10%+均等割の計算、後払いの仕組み、副業がバレる仕組みを解説します。


※ 本記事は2025年分の税制に基づく概要説明です。iDeCo・小規模企業共済の適用・金額は個人の状況により異なります。正確な判断は税理士・FPにご相談ください。

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