【税金入門 vol.9】所得控除と税額控除の違い — 「所得から引く」vs「税金から引く」
「控除」は2種類ある
税金の話で何度も出てくる「控除」という言葉。引かれるもの、差し引けるもの — くらいのイメージで理解している人が多いはず。
でも控除には所得控除と税額控除の2種類があって、この2つは仕組みも節税効果もまったく別物。ここを曖昧にしたまま税金の話を聞いても、効果の大きさを正しく判断できません。
所得控除 — 「所得から引く」
所得控除は、税額を計算する前の段階で所得から差し引くもの。
所得 − 所得控除 = 課税所得
【税金入門 vol.6】累進課税の仕組み — 「税率20%=全額に20%」の誤解を解くで解説したとおり、所得税は課税所得に対して税率をかけて計算します。所得控除で課税所得が小さくなれば、その分だけ税額も減る。
ポイントは、節税額が「控除額そのもの」ではないということ。
所得控除50万円 × 税率20% = 節税額10万円
50万円控除できても、実際に税金が減るのは「50万円×自分の税率」の分だけ。税率5%の人なら2.5万円、税率33%の人なら16.5万円。同じ50万円の控除でも、所得が高い人ほど節税効果が大きい仕組みです。
税額控除 — 「税金から直接引く」
税額控除は、計算済みの税額から直接差し引くもの。
所得税額 − 税額控除 = 最終的な所得税
こちらは控除額がそのまま節税額になります。
税額控除20万円 → 税金が20万円減る
税率に関係なく、控除額=節税額。だから税額控除は所得控除より効果がストレートです。
同じ20万円の控除で比べてみる
具体的に計算してみます。課税所得500万円(税率20%)の人が、20万円の「所得控除」と「税額控除」をそれぞれ使った場合。
所得控除20万円を使った場合
課税所得: 500万 − 20万 = 480万円
所得税: 480万 × 20% − 427,500 = 532,500円
控除なしの場合: 500万 × 20% − 427,500 = 572,500円
→ 差額(節税額): 40,000円
税額控除20万円を使った場合
所得税: 572,500円(所得控除なしで計算)
税額控除: − 200,000円
→ 最終税額: 372,500円
→ 節税額: 200,000円
| 所得控除20万円 | 税額控除20万円 | |
|---|---|---|
| 節税額 | 40,000円 | 200,000円 |
| 控除額に対する節税率 | 20%(=自分の税率) | 100% |
同じ20万円でも節税効果は5倍。税額控除のほうが圧倒的に強力です。
だからこそ税額控除は種類が少なく、条件も厳しい。国としてはあまり大盤振る舞いできない仕組みなんですよね。
計算の流れ — 所得控除と税額控除はどこで効くか
確定申告書の計算フローで見ると、効く場所が違います。
所得控除は②の段階、税額控除は④の段階。税額控除は「一番最後に直接引く」ぶん、効果がダイレクトに出るわけです。
代表的な所得控除(15種類)
所得控除は全部で15種類。主要なものを一覧にしました。
全員が使える所得控除
| 控除名 | 控除額 | 内容 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 58万〜95万円 | 所得に応じて段階的(2025年暫定措置)。2,500万超でゼロ |
| 社会保険料控除 | 支払額の全額 | 国保・年金・健保・厚生年金すべて |
| 生命保険料控除 | 最大12万円 | 一般・介護・個人年金の3区分(各4万円) |
| 地震保険料控除 | 最大5万円 | 地震保険の保険料 |
| 医療費控除 | 支払額−10万円 | 年間の医療費が10万円を超えた分 |
| 雑損控除 | 損害額に応じて | 災害・盗難・横領による損失 |
| 寄附金控除 | 寄附額−2,000円 | ふるさと納税もここ(所得税分) |
家族構成で使える所得控除
| 控除名 | 控除額 | 内容 |
|---|---|---|
| 配偶者控除 | 最大38万円 | 配偶者の所得48万以下。納税者の所得1,000万超は不可 |
| 配偶者特別控除 | 最大38万円 | 配偶者の所得48万超〜133万以下。段階的に減少 |
| 扶養控除 | 38万〜63万円 | 16歳以上の扶養親族。年齢で控除額が変わる |
| ひとり親控除 | 35万円 | 生計を一にする子がいるひとり親 |
| 寡婦控除 | 27万円 | 夫と離婚・死別した一定の女性 |
| 勤労学生控除 | 27万円 | 勤労学生で所得75万以下 |
| 障害者控除 | 27万〜75万円 | 本人・配偶者・扶養親族が障害者 |
フリーランスに特に重要な所得控除
| 控除名 | 控除額 | 内容 |
|---|---|---|
| 小規模企業共済等掛金控除 | 掛金の全額 | iDeCo・小規模企業共済の掛金がまるごと控除 |
iDeCoの掛金は全額所得控除。フリーランスなら月額68,000円(年間81.6万円)まで拠出できます。課税所得500万円の人がフルで使うと、所得税・住民税・復興特別所得税あわせて年間約25万円の節税。iDeCoを始めていないなら、毎月2万円以上を取りこぼしている計算です。会社員でも企業年金がない場合は月23,000円まで使えます。しかも運用益も非課税。freee会計
ならiDeCoの掛金も自動で帳簿に反映されます。これは後の記事で詳しく解説します。
代表的な税額控除
税額控除は数が少ないうえに、条件も厳しめ。
| 控除名 | 控除額 | 内容 |
|---|---|---|
| 住宅ローン控除 | 最大31.5万円/年 | 住宅ローン残高の0.7%。最長13年間。上限は住宅の種類・入居年で異なる |
| 配当控除 | 配当所得の10% | 株の配当を総合課税で申告した場合 |
| 外国税額控除 | 外国で納めた税額 | 二重課税の排除 |
| 政党等寄附金特別控除 | (寄附額−2,000円)×30% | 政党や政治資金団体への寄附 |
住宅ローン控除が税額控除の代表格。年末のローン残高の0.7%がそのまま税金から引かれる。認定長期優良住宅で借入限度4,500万円なら年間最大31.5万円が税金から直接減る。最長13年間使えるので、総額で数百万円の節税になるケースもあります。これも後の記事で詳しく取り上げます。
ふるさと納税 — 所得控除と税額控除の「合わせ技」
ふるさと納税は「寄附金控除」として所得控除に分類されますが、実は住民税側では税額控除としても機能しています。
ふるさと納税の控除の内訳:
① 所得税: 寄附金控除(所得控除)→ 節税額は「控除額×税率」
② 住民税(基本分): 税額控除 → (寄附額−2,000円)×10%
③ 住民税(特例分): 税額控除 → 残りの全額を控除
この3段構えで「実質2,000円」が実現されています。所得控除だけでは実質2,000円にならないけど、住民税の税額控除で残りを全部カバーする仕組み。詳しくは次の次の記事で解説します。
よくある誤解 — 「控除=その金額が戻ってくる」
「医療費控除で10万円控除されたから10万円返ってくる」。これ、一番よくある間違い。
医療費控除は所得控除。だから実際に戻ってくるのは「10万円×自分の税率」の金額。
医療費控除10万円 × 税率20% = 還付額2万円
10万円まるまる返ってくるわけじゃない。所得控除と税額控除の違いを知っているだけで、この誤解を避けられます。
節税を考えるなら、まず手元の控除が「所得控除」か「税額控除」かを確認すること。控除額の大きさだけで比べると判断を間違えます。自分がどの控除を使えていて、どれを見落としているか — freee会計
は質問に答えるだけで適用可能な控除を自動判定してくれるので、確認漏れによる損失を防げます。
この記事のまとめ
- 控除は所得控除(所得から引く)と税額控除(税金から引く)の2種類
- 所得控除の節税額は「控除額×税率」。税額控除は「控除額=節税額」
- 同じ20万円でも、所得控除は4万円、税額控除は20万円の節税(税率20%の場合)
- 所得控除は15種類と豊富。税額控除は種類が少なく条件も厳しい
- 「控除=その金額が返ってくる」は誤解。所得控除は税率分しか効かない
次の記事では、全員が使える基本の所得控除 — 基礎控除・社保控除・配偶者控除・扶養控除をひとつずつ解説します。
※ 本記事は2025年分の税制に基づく概要説明です。控除額・適用条件は個人の状況により異なります。正確な判断は税理士にご相談ください。
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