【税金入門 vol.25】年金の仕組み — 国民年金と厚生年金の基本
年金は「老後だけのもの」ではない
年金と聞くと「老後にもらえるお金」というイメージが強いですが、実はそれだけではありません。年金制度がカバーしているのは以下の3つです。
- 老齢年金 — 65歳から受給。老後の生活費
- 障害年金 — 病気やケガで障害が残ったとき
- 遺族年金 — 加入者が亡くなったとき、遺族に支給
障害年金と遺族年金は若い人でも受け取る可能性があります。「年金なんてまだ先の話」と思って未納にしていると、いざというときに障害年金や遺族年金を受け取れなくなります。
2階建て構造 — 国民年金と厚生年金
日本の年金制度は「2階建て」と呼ばれます。
1階: 国民年金(基礎年金)
20歳〜60歳の全員が加入する年金です。自営業者もフリーランスも会社員も、全員が1階部分に加入しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加入対象 | 20〜60歳の全員 |
| 保険料 | 月17,510円(2025年度、定額) |
| 受給額(満額) | 月約68,000円(年約81.6万円) |
| 受給開始 | 原則65歳から |
保険料は所得に関係なく定額。満額受給するには40年間(480か月)の納付が必要です。未納期間があると、その分だけ受給額が減ります。
2階: 厚生年金
会社員・公務員だけが加入する年金です。国民年金に上乗せされる形で支給されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加入対象 | 会社員・公務員 |
| 保険料 | 報酬の18.3%(労使折半、本人9.15%) |
| 受給額 | 報酬と加入期間に比例 |
| 受給開始 | 原則65歳から |
厚生年金の保険料は給与に比例します。給与が高いほど保険料も高い。ただしその分、将来の受給額も増える仕組みなので、「取られるだけ」ではありません。
フリーランスは1階だけ
【税金入門 vol.24】フリーランスの社保 — 国保・国民年金の計算と上限でも触れましたが、フリーランスは国民年金のみ。厚生年金には加入できません。
国民年金の満額が月約68,000円。これだけで老後の生活費を賄うのは現実的ではないですよね。だからこそiDeCoや小規模企業共済で自分で上乗せする必要があります。
将来もらえる年金額の目安
「結局いくらもらえるの?」という話ですよね。目安を出してみます。
国民年金(基礎年金)
40年間満額納付した場合:月約68,000円(年約81.6万円)
未納期間がある場合は、納付月数に応じて減額されます。
厚生年金の受給額の目安
厚生年金の受給額は「平均標準報酬額」と「加入期間」で決まります。計算式自体を覚える必要はありませんが、具体例で見るとイメージが掴めます。
年収別の年金受給額の目安
国民年金 + 厚生年金の合計(40年加入、65歳受給開始):
| 現役時代の平均年収 | 年金月額(概算) |
|---|---|
| 300万円 | 約11万円 |
| 400万円 | 約13万円 |
| 500万円 | 約15万円 |
| 600万円 | 約17万円 |
| 700万円 | 約18万円 |
| 800万円 | 約19万円 |
年収600万円で40年間働いても、年金は月約17万円。現役時代の手取りの半分以下です。「年金だけで暮らせる」と思っている人は、この数字を見て考え直したほうがいいかもしれません。現役時代の手取りと社会保険料の関係はZeiSimのシミュレーターで確認できます。
フリーランスの場合
フリーランスは国民年金のみなので、月約68,000円(満額)。会社員の半分以下です。
| 会社員(年収600万) | フリーランス | |
|---|---|---|
| 年金月額 | 約17万円 | 約6.8万円 |
| 年金年額 | 約204万円 | 約81.6万円 |
この差を埋めるには、iDeCo(月68,000円まで)や小規模企業共済(月70,000円まで)で自分で積み立てるしかありません。
繰上げ受給と繰下げ受給
年金は原則65歳からですが、受給開始を早めたり遅らせたりできます。
繰上げ受給(60〜64歳)
65歳より前に受給を開始できます。ただし1か月早めるごとに0.4%減額されます。
60歳から受給すると:0.4% × 60か月 = 24%減額
月68,000円が月51,680円に。一度減額されたら一生そのまま。元に戻りません。
繰下げ受給(66〜75歳)
65歳より後に受給を開始すると、1か月遅らせるごとに0.7%増額されます。
70歳から受給すると:0.7% × 60か月 = 42%増額
月68,000円が月96,560円に。受給開始が遅れる分、受け取れる総額が増えます。
繰上げ・繰下げの損益分岐点
繰下げの場合、おおよそ受給開始から約12年で通常受給の総額を上回ります。70歳開始なら82歳前後が損益分岐点。それ以上長生きすれば繰下げのほうが得です。
逆に繰上げの場合、76歳前後で通常受給に総額で追い抜かれます。
正直、何歳まで生きるかは誰にも分からないので、「確実に得する方法」はありません。健康状態や他の収入源と合わせて、総合的に判断してください。
年金を増やす方法
会社員の場合
- 長く働く — 加入期間が長いほど受給額が増える
- 給与を上げる — 標準報酬月額が上がれば年金も増える
- iDeCo — 月23,000円まで積立可能(企業年金なしの場合)。掛金は全額所得控除
フリーランスの場合
- 付加年金 — 月400円の追加で年金が増える。2年で元が取れる
- 国民年金基金 — 掛金は全額所得控除。iDeCoとの合算で月68,000円まで
- iDeCo — 月68,000円まで。運用益非課税
- 小規模企業共済 — 月70,000円まで。退職金の代わり
自分の将来の年金額がいくらになるか、シミュレーターで確認してみてください。
よくある間違い
「年金は破綻するからもらえない」
年金制度が完全に破綻する可能性は低いです。ただし、受給額が将来的に減る可能性はあります。「もらえない」と決めつけて未納にするのは最悪の選択。未納にすると障害年金・遺族年金も受け取れなくなるリスクがあります。
「国民年金だけで老後は暮らせる」
月68,000円(満額)で暮らせるかどうか、冷静に考えてみてください。家賃・食費・医療費だけで足りません。フリーランスは特に、iDeCoや小規模企業共済で上乗せするのが必須です。
「繰下げすれば必ず得」
繰下げで年金は増えますが、損益分岐点(約12年)まで生きないと元が取れません。75歳まで繰下げて87歳前に亡くなると、通常受給のほうが総額は多くなります。
この記事のまとめ
- 年金は老齢・障害・遺族の3つをカバー。老後だけのものではない
- 会社員は国民年金+厚生年金の2階建て。フリーランスは国民年金のみ
- 国民年金の満額は月約68,000円。40年間納付が条件
- 会社員(年収600万)の年金は月約17万円。フリーランスの約2.5倍
- 繰下げ受給で1か月あたり0.7%増額。70歳開始なら42%増
- フリーランスはiDeCo・小規模企業共済で自分で上乗せが必須
これで第6章「社会保険」は完了です。次の第7章では消費税に進みます。
※ 本記事は2025年分の制度に基づく概要説明です。年金の受給額は個人の加入期間・報酬額により異なります。正確な受給見込み額は「ねんきんネット」で確認できます。
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