【税金入門 vol.24】フリーランスの社保 — 国保・国民年金の計算と上限
フリーランスの社保は「高くて薄い」
【税金入門 vol.23】会社員の社保 — 標準報酬月額・労使折半・扶養で会社員の社会保険を解説しました。今回はフリーランス側を見ていきます。
結論から言うと、フリーランスの社会保険は会社員と比べて保険料が高く、保障が薄い。労使折半がないので全額自己負担、扶養制度もないので家族が増えるほど負担が増えます。
ただし仕組みを理解しておけば、保険料を抑える方法はあります。
フリーランスの社会保険は2つだけ
会社員は健康保険+厚生年金+雇用保険+労災保険の4つに加入しますが、フリーランスは基本的に以下の2つだけです。
- 国民健康保険(国保) — 医療費の自己負担を3割に
- 国民年金 — 老後の基礎年金
雇用保険も労災保険もありません。失業しても失業手当はゼロ。ここは自分で備えるしかありません。
国民健康保険(国保)の計算方法
国保の保険料計算は自治体によって異なりますが、基本的な構造は共通です。
国保の4つの要素
国保の保険料は以下の4つの合計です。
| 要素 | 内容 | 計算方法 |
|---|---|---|
| 所得割 | 所得に応じた金額 | (前年の所得 − 43万円)× 料率 |
| 均等割 | 加入者1人あたりの定額 | 人数 × 均等割額 |
| 平等割 | 1世帯あたりの定額 | 世帯ごとに固定(ない自治体も) |
| 資産割 | 固定資産税に応じた金額 | 固定資産税額 × 料率(ない自治体も) |
実務上は所得割と均等割が大部分を占めます。所得が高いほど保険料が上がる仕組みです。
具体例
東京都の某区の場合(概算、40歳未満・単身):
所得割の料率を約10%、均等割を約5万円とすると:
年間50万円以上。会社員の協会けんぽ(労使折半後)と比べるとかなり高いですよね。しかもこれ、扶養家族がいれば均等割が人数分加算されるので、さらに上がります。自分の所得だと国保がいくらになるか、シミュレーターで試算できます。
上限109万円
国保には年間の上限額があります。2025年度は109万円です。
| 区分 | 上限額 |
|---|---|
| 医療分 | 89万円 |
| 後期高齢者支援金分 | 20万円 |
| 合計(40歳未満) | 109万円 |
※ 40〜64歳はさらに介護分(上限17万円)が加算されます。
所得が一定以上になると上限に達するので、それ以上稼いでも国保の保険料は増えません。ただし109万円という金額、冷静に考えてみてください。月額にすると約9万円。全額自己負担で毎月出ていくとなると、かなり重い負担ですよね。
国民年金 — 定額の基礎年金
国民年金の保険料は所得に関係なく定額です。
| 項目 | 金額(2025年度) |
|---|---|
| 月額 | 17,510円 |
| 年額 | 210,120円 |
会社員の厚生年金と違って、いくら稼いでも保険料は同じ。逆に言えば、将来もらえる年金も一律で月約6.8万円(満額、40年加入の場合)。これだけで老後の生活費を賄うのは現実的ではありません。
上乗せする方法
国民年金だけでは心もとないので、以下の制度で上乗せできます。
- 付加年金 — 月400円の追加で、将来の年金が月200円×納付月数分増える。2年で元が取れる
- 国民年金基金 — 掛金は所得控除。iDeCoとの合算で月68,000円が上限
- iDeCo — 【税金入門 vol.14】iDeCo・小規模企業共済 — 全額所得控除の威力と出口の課税で解説済み
会社員との保険料比較
同じ年収600万円で、会社員とフリーランスの社会保険料を比べてみましょう。
一見するとフリーランスのほうが安く見えます。でもこの比較にはカラクリがあります。
カラクリ1: 会社員は会社が半分払っている
会社員の実際の社保コストは本人負担の約2倍(約176万円)。つまり本人が感じる負担は約88万円ですが、実際には会社が約88万円を追加で負担しています。フリーランスは77万円が全額自己負担です。
カラクリ2: 将来の年金受給額が全然違う
フリーランスの国民年金は満額でも月約6.8万円。会社員は厚生年金が上乗せされるので、月15〜20万円程度になるケースが多いです。「保険料が安い」のは「保障も薄い」から。ここは見落としがちなポイントです。
カラクリ3: 扶養制度がない
会社員なら配偶者と子どもの保険料がゼロ。フリーランスの国保は家族全員に均等割がかかります。家族がいるフリーランスは特に注意が必要です。
国保の保険料を抑える方法
1. 経費を適切に計上する
国保の所得割は「前年の所得」がベース。経費を適切に計上して所得を下げれば、国保も下がります。【税金入門 vol.21】経費の基本 — 家事按分と税務調査のポイントを参考にしてください。
2. 青色申告特別控除を使う
青色申告の65万円控除は所得税だけでなく、国保の計算にも反映されます。65万円の控除で国保が約6.5万円下がります(所得割率10%の場合)。
3. iDeCo・小規模企業共済を使う
iDeCoと小規模企業共済の掛金は所得控除で、所得税・住民税が下がります。ただし国保の算定基礎にiDeCo控除が反映されるかは自治体によって異なるので、お住まいの自治体に確認しておきましょう。
4. マイクロ法人を設立する
フリーランスが法人を設立して役員報酬を低く設定すれば、社会保険料を大幅に圧縮できます。これがいわゆる「マイクロ法人スキーム」。ZeiSimのシミュレーターで具体的な金額を試算できます。
よくある間違い
「フリーランスのほうが社保が安い」
保険料だけ見るとそう見えるケースもありますが、将来の年金受給額や扶養制度の有無を考慮すると、トータルではフリーランスのほうが不利です。「安い」のは「保障も薄い」からです。
「国保は全国一律」
国保の保険料は自治体によって大きく異なります。同じ所得でも、住む場所によって年間10万円以上の差が出ることがあります。引っ越しの際には国保の料率も確認しておきましょう。
「国民年金を払わなくても大丈夫」
免除を受けずに未納のままにすると、将来の年金が減るだけでなく、障害年金や遺族年金も受け取れなくなるリスクがあります。払えない場合は免除・猶予の手続きをしておくと安心です。
この記事のまとめ
- フリーランスの社会保険は国保+国民年金の2つだけ
- 国保は所得割+均等割で計算。上限は年間109万円
- 国民年金は定額月17,510円。将来の受給額は月約6.8万円
- 扶養制度がないので家族が増えるほど国保が上がる
- 国保を下げるには経費計上・青色控除・iDeCoが有効
- マイクロ法人を設立すれば社保を大幅に圧縮できる
次の記事では、年金の仕組みを解説します。国民年金と厚生年金、将来もらえる額の目安まで。
※ 本記事は2025年分の制度に基づく概要説明です。国保の保険料率・上限額は自治体・年度により異なります。正確な金額は各市区町村にご確認ください。
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