【税金入門 vol.5】10種類の所得 — 給与、事業、雑…計算方法と課税方式がぜんぶ違う
なぜ所得を10種類に分けるのか
【税金入門 vol.4】「収入」と「所得」は別モノ — 税金の基本で、「税金は収入ではなく所得にかかる」という話をしました。
では、所得は所得でも — 給料でもらった所得と、株を売って得た所得は、同じように課税されるのか?
答えはNO。日本の所得税法は所得を10種類に分類して、計算方法も税率もバラバラ。「稼ぎ方が違えば、課税のルールも違う」という設計です。
10種類と聞くとうんざりしますが、会社員やフリーランスが実際に関わるのは3〜4種類。全部暗記する必要はありません。「自分に関係あるのはどれか」を把握するのがこの記事のゴールです。
10種類の所得、一覧
| # | 所得の種類 | ざっくり言うと | 課税方式 |
|---|---|---|---|
| 1 | 給与所得 | 会社からもらう給料・賞与 | 総合課税 |
| 2 | 事業所得 | フリーランス・個人事業の利益 | 総合課税 |
| 3 | 不動産所得 | 家賃収入の利益 | 総合課税 |
| 4 | 利子所得 | 預金の利息 | 分離課税(源泉) |
| 5 | 配当所得 | 株の配当金 | 総合or分離を選択 |
| 6 | 譲渡所得 | 資産(株・不動産など)を売った利益 | 分離課税が多い |
| 7 | 一時所得 | 懸賞金、保険の満期金など | 総合課税(1/2) |
| 8 | 雑所得 | 副業収入、年金、仮想通貨の利益など | 総合課税 |
| 9 | 山林所得 | 山林を伐採・譲渡した利益 | 分離課税 |
| 10 | 退職所得 | 退職金 | 分離課税 |
「総合課税」と「分離課税」の違いは後で説明します。会社員・フリーランスに関係の深いものから順に見ていきます。
会社員が関わる所得
1. 給与所得 — ほとんどの会社員のメイン
会社から受け取る給料、ボーナス、各種手当。会社員の所得のほぼ全てがこれです。
給与収入 − 給与所得控除 = 給与所得
給与所得控除の仕組みは【税金入門 vol.4】「収入」と「所得」は別モノ — 税金の基本で詳しく扱いました。年収に応じた「みなし経費」が自動的に引かれる仕組みです。
ポイントは、給与所得は源泉徴収+年末調整で完結すること。確定申告が不要なのは、会社が代わりに税額を計算して納付してくれているから。会社員が税金を意識しにくい最大の理由がここにあります。
10. 退職所得 — 退職金は優遇されている
退職金は「長年の勤務に対する報酬」という位置づけで、税制上かなり優遇されています。
(退職金 − 退職所得控除) × 1/2 = 退職所得
退職所得控除は勤続年数に応じて増えます。20年以下なら「40万円×勤続年数」(最低80万円)、20年超は「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」。勤続20年で800万円、30年で1,500万円。しかも計算の最後に1/2にしてもらえる。退職金2,000万円で勤続30年なら、課税対象はたったの250万円です。
さらに退職所得は分離課税。他の所得と合算されないので、累進課税で税率が跳ね上がることもない。老後資金としての性質が強いぶん、税制で手厚く守られている所得です。
フリーランスが関わる所得
2. 事業所得 — フリーランスのメイン
個人事業として継続的に行っている仕事から得た利益。フリーランスエンジニア、デザイナー、ライター、飲食店経営など。
売上(収入) − 必要経費 − 青色申告特別控除 = 事業所得
給与所得との最大の違いは実額で経費を計上できること。その代わり、自分で帳簿をつけて確定申告する必要があります。
事業所得には大きなメリットがもうひとつ。損益通算ができます。事業で赤字が出た場合、その赤字を給与所得など他の所得と相殺して税金を減らせる。これは雑所得にはない特権です。
8. 雑所得 — 「どれにも当てはまらない」受け皿
10種類のどれにも該当しない所得は、全部ここに入ります。具体的には:
- 副業収入: 会社員がスキマ時間でやっている仕事の報酬
- 公的年金: 老齢年金、企業年金
- 仮想通貨の売却益: ビットコインやイーサリアムの利益
なお、FX(外国為替証拠金取引)も雑所得に分類されますが、こちらは申告分離課税(税率20.315%)で、上記の総合課税の雑所得とは課税方式が異なります。仮想通貨は総合課税、FXは分離課税 — 同じ雑所得でも扱いが違うので注意してください。
副業がここに分類されるか事業所得になるかは、実務上かなり揉めるポイント。正直、税務署の担当者によって判断が割れることすらあります。国税庁は「反復・継続・独立して行っているか」を判断基準にしていますが、明確な線引きはありません。
雑所得の最大のデメリットは損益通算ができないこと。仮想通貨で100万円損しても、その損失を給与所得から引くことはできません。事業所得との大きな違いがここです。
投資をしている人が関わる所得
6. 譲渡所得 — 「売った」ときに発生する
資産を売却して利益が出たときの所得。対象は主に2つ。
株式の譲渡所得: 上場株式を売った利益。税率は所得税15.315%+住民税5%の一律20.315%。どれだけ稼いでも税率は変わりません。これが「株の利益は分離課税で有利」と言われる理由です。
不動産の譲渡所得: 土地や建物を売った利益。所有期間が5年以下(短期)だと約39%、5年超(長期)だと約20%。長く持っていたほうが税率が下がる仕組みです。
5. 配当所得 — 株の配当金
株式の配当金やファンドの分配金。課税方式を自分で選べる珍しい所得です。
- 確定申告不要制度: 源泉徴収(20.315%)で完結。確定申告しなくてOK
- 総合課税で申告: 他の所得と合算。課税所得が低い人は実効税率が20%を下回ることも
- 申告分離課税: 株の譲渡損失と相殺できる
NISAで投資している人は配当も非課税なので関係ありませんが、特定口座で配当をもらっている人は選択の余地がある。年収が低めで配当がそこそこあるなら、総合課税で申告すると税金が返ってくるケースも。逆に高年収なら申告不要のまま放置したほうが得です。
4. 利子所得 — 預金利息
銀行預金の利息。源泉分離課税で20.315%が自動的に引かれて終わり。確定申告は不要で、自分で何かする必要は一切ない。金額も小さいので、これを意識している人はほとんどいないでしょう。
その他の所得
3. 不動産所得 — 大家さんの所得
アパートやマンションの家賃収入から経費を引いた利益。総合課税で、事業所得と同じように損益通算ができます。サラリーマン大家が「不動産で節税」と言っているのは、不動産所得の赤字を給与所得と相殺しているケースが多いです。
7. 一時所得 — 臨時収入
懸賞の賞金、生命保険の満期金、競馬の払戻金など。「一時的で偶発的な収入」が該当します。
特徴は50万円の特別控除と1/2課税。一時所得が100万円あっても、課税対象は (100万 − 50万)× 1/2 = 25万円 だけ。かなり優遇されています。
9. 山林所得
山林を伐採して売った利益。ほとんどの人には無縁なので、「そういうものがある」と知っておけば十分です。
総合課税と分離課税の違い
ここまで何度も出てきた「総合課税」と「分離課税」。ここを押さえないと、所得の話は半分しかわかりません。
総合課税: 合算して累進税率
給与所得、事業所得、不動産所得、雑所得などは全部合算されて、合計額に対して所得税の累進税率(5〜45%)がかかります。さらに住民税10%が加わる。
会社員が副業で雑所得100万円を稼いだとして、その100万円は給与所得に上乗せされます。給与所得が高い人ほど、副業の利益にも高い税率が適用される。稼ぐほど税率が上がる — これが累進課税の宿命です。
分離課税: 他の所得と切り離して固定税率
株式の譲渡所得や退職所得は、他の所得とは切り離して、それぞれ独自の税率で課税されます。
株を売った利益がいくら出ても税率は20.315%のまま。給与所得が高い人でも、株の利益まで累進で取られることはない。これが分離課税のメリットです。
「どの所得に該当するか」で税額が変わる
同じ100万円の収入でも、所得の種類によって手取りが大きく違います。
- 給与所得として100万円 → 給与所得控除で大部分が消える
- 事業所得として100万円 → 経費と青色控除を引ける。損益通算も可能
- 雑所得として100万円 → 経費は引けるが損益通算は不可
- 一時所得として100万円 → 50万控除+1/2で課税対象は25万円
- **譲渡所得(株式)**として100万円 → 分離課税で約20.3万円の税金
所得の分類は自分で選べるものではなく、稼ぎ方によって自動的に決まる。ただし副業が「事業所得」になるか「雑所得」になるかのようなグレーゾーンも存在します。どちらに該当するかで損益通算の可否が変わるので、実務上は結構大きな問題です。
この記事のまとめ
- 日本の所得税は所得を10種類に分類。計算方法と課税方式がそれぞれ違う
- 会社員のメインは給与所得。フリーランスは事業所得
- 副業収入は雑所得に分類されることが多い。事業所得との違いは損益通算の可否
- 総合課税は合算して累進税率、分離課税は切り離して固定税率
- 同じ金額でも所得の種類で税額がまるで違う。まずは自分の所得がどれに該当するか確認するところから
次の記事では、総合課税の核心 — 累進課税の仕組みに踏み込みます。「税率20%の区間に入ったら全額に20%がかかる」という誤解、意外と多いです。
※ 本記事は2025年分の税制に基づく概要説明です。所得の分類や課税方式の詳細は個人の状況により異なります。正確な判断は税理士にご相談ください。
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