【税金入門 vol.6】累進課税の仕組み — 「税率20%=全額に20%」の誤解を解く
「課税所得500万円だから税率20%で100万円」 — これ、間違いです
所得税の税率表を見て、こう計算した人はいませんか。
課税所得500万円 × 税率20% = 所得税100万円
実際の所得税額は約57万円。100万円との差は43万円もあります。なぜこんなに違うのか。
答えは超過累進税率という仕組みにあります。日本の所得税は「全額に同じ税率がかかる」のではなく、「一定額を超えた部分にだけ、より高い税率がかかる」。ここを正しく理解すると、税金の計算が一気にクリアになります。
超過累進税率とは
所得税は7段階の税率区分に分かれています。
| 課税所得 | 税率 |
|---|---|
| 195万円以下 | 5% |
| 195万超〜330万円 | 10% |
| 330万超〜695万円 | 20% |
| 695万超〜900万円 | 23% |
| 900万超〜1,800万円 | 33% |
| 1,800万超〜4,000万円 | 40% |
| 4,000万超 | 45% |
「課税所得500万円の人は税率20%」と言うのは、最も高い税率が20% という意味。500万円全部に20%がかかるわけではありません。
実際には所得をブロックに分けて、それぞれに対応する税率をかけていく仕組みです。ケーキを7段にスライスして、各段に別々の税率ラベルが貼ってあるイメージですね。
課税所得500万円の税額を実際に計算する
課税所得500万円を、税率の区分ごとに分解してみます。
ブロック1: 0〜195万円(税率5%)
195万円 × 5% = 97,500円
最初の195万円には、所得がいくら多くても5%しかかかりません。年収1億の人でも同じ。全員共通の最低税率ゾーンです。
ブロック2: 195万〜330万円(税率10%)
(330万 − 195万)× 10% = 135万 × 10% = 135,000円
195万円を超えて330万円までの135万円には10%。
ブロック3: 330万〜500万円(税率20%)
(500万 − 330万)× 20% = 170万 × 20% = 340,000円
20%がかかるのは、330万円を超えた170万円だけ。500万円全額ではありません。
合計
97,500 + 135,000 + 340,000 = 572,500円
所得税は572,500円。「500万×20%=100万円」の誤解と比べると約43万円も少ない。この差、地味にデカいですよね。
速算表を使えば一発で計算できる
「毎回ブロックに分けて計算するのは面倒」と思いましたか。安心してください、国税庁が速算表を用意しています。
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万超〜330万円 | 10% | 97,500円 |
| 330万超〜695万円 | 20% | 427,500円 |
| 695万超〜900万円 | 23% | 636,000円 |
| 900万超〜1,800万円 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万超〜4,000万円 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万超 | 45% | 4,796,000円 |
この「控除額」は、全額に税率をかけた場合と超過累進で計算した場合の差額を調整する数字。使い方はシンプルです。
所得税 = 課税所得 × 税率 − 控除額
課税所得500万円なら:
500万 × 20% − 427,500 = 1,000,000 − 427,500 = 572,500円
ブロックに分けて計算した結果とぴったり一致。確定申告でも実務でもこの速算表を使うので、ブックマークしておいて損はないです。
「実効税率」で考える
税率の区分が20%の人でも、実際に払っている税率(実効税率)は20%よりずっと低い。
所得税 572,500円 ÷ 課税所得 500万円 = 実効税率 約11.5%
表面上の税率20%に対して、実効税率は約11.5%。この差を知っているだけで、税金に対する感覚がまるで変わります。
課税所得ごとの実効税率を並べるとこうなります。
| 課税所得 | 最高税率 | 所得税額 | 実効税率 |
|---|---|---|---|
| 195万円 | 5% | 97,500円 | 5.0% |
| 330万円 | 10% | 232,500円 | 7.0% |
| 500万円 | 20% | 572,500円 | 11.5% |
| 695万円 | 20% | 962,500円 | 13.8% |
| 900万円 | 23% | 1,434,000円 | 15.9% |
| 1,800万円 | 33% | 4,404,000円 | 24.5% |
最高税率と実効税率の間には常にギャップがある。「税率33%の区間に入った」と聞くと重たく感じますが、実効税率は24.5%。給料が上がったぶんの手取りが激減する — というのは誤解です。
とはいえ、課税所得が増えるほど累進で税負担が重くなるのは事実。フリーランスで課税所得500万円を超えているなら、マイクロ法人で所得を分散させるだけで年間の税・社保負担が数十万円変わるケースがあります。放置している期間が長いほど、その差額は積み上がります。マネーフォワード クラウド会社設立
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「稼ぐほど損」は本当か
累進課税への誤解でよく聞くのが、「稼ぎすぎると税率が上がって損する」という話。
結論、これは完全な間違い。超過累進税率では、税率が上がるのは「超えた部分」だけ。すでに低い税率が適用されている部分には一切影響しません。
具体例で確認します。課税所得が330万円から340万円に10万円増えたとき:
- 330万円までの税額: 232,500円(変わらない)
- 増えた10万円に対する税額: 10万 × 20% = 20,000円
- 手元に残る増加分: 10万 − 2万 = 8万円
10万円稼いで8万円残る。「稼いだら損」なんてことは絶対に起きません。手取りの増え方は緩やかになりますが、稼げば稼ぐほど手取りは必ず増えます。
所得税だけじゃない — 住民税と復興特別所得税
ここまで所得税だけで話をしてきましたが、実際にはさらに上乗せがあります。
住民税: 一律10%
住民税は累進ではなく一律10%(所得割)。課税所得500万円なら単純に50万円。所得税と合わせると:
所得税 572,500円 + 住民税 500,000円 = 1,072,500円
住民税は累進しないぶん、所得が増えるほど税負担全体に占める割合は相対的に下がっていく。ここは累進課税との違いを押さえておくとよいポイントです。
復興特別所得税: 所得税の2.1%
2037年まで、所得税額に対して2.1%の復興特別所得税がかかります。
572,500 × 2.1% = 12,022円
金額としては小さいですが、確定申告書にも項目として出てくるので、知っておけば「これ何?」と混乱せずに済みます。
合計の実効税率
課税所得500万円にかかる税金の合計:
所得税 572,500 + 復興税 12,022 + 住民税 500,000 = 1,084,522円
実効税率は約21.7%。課税所得500万円で実際に払う所得税+住民税はざっくり2割強。この数字を頭に入れておくと、年収から手取りを逆算するときに役立ちます。
※ 住民税は所得割10%のみで計算。均等割(年5,000円)は含めていません。
「課税所得」は年収とは違う
ここで注意。ここまで使ってきた「課税所得500万円」は、年収500万円ではありません。
【税金入門 vol.4】「収入」と「所得」は別モノ — 税金の基本で解説したとおり、年収からは給与所得控除や各種所得控除が差し引かれます。
年収 − 給与所得控除 − 各種所得控除 = 課税所得
年収700万円の会社員なら:
年収700万 − 給与所得控除180万 − 所得控除(基礎控除+社保等)約120万 = 課税所得 約400万円
課税所得500万円というのは、年収でいえば850万円前後に相当する水準。累進課税の税率表を見るときは「自分の年収」ではなく「課税所得がいくらか」を基準にしてください。ここを間違えると、自分の税負担を実際より重く見積もってしまいます。
この記事のまとめ
- 日本の所得税は超過累進税率。全額に同じ税率がかかるわけではない
- 課税所得500万円の所得税は約57万円。「500万×20%=100万」は誤解
- 速算表を使えば「課税所得×税率−控除額」で一発計算できる
- 実効税率は最高税率より必ず低い。課税所得500万円で実効約11.5%
- 稼ぎが増えて「損」することは絶対にない。手取りは必ず増える
- 住民税(一律10%)と復興特別所得税(2.1%)も忘れずに
累進課税の仕組みを理解したら、次は「自分の場合、法人化でいくら税負担が変わるのか」を具体的な数字で確認してみてください。課税所得500万円前後のフリーランスは、マイクロ法人を活用することで所得税・住民税・社会保険料の合計を年間数十万円単位で圧縮できる可能性があります。具体的な役員報酬の決め方で節税額が大きく変わります。個人のまま確定申告を続けると、毎年その差額を余計に支払い続けることになります。
次の記事では、会社員のための自動経費控除 — 給与所得控除を掘り下げます。年収ごとにいくら控除されるのか、なぜ上限があるのか。
※ 本記事は2025年分の税制に基づく概要説明です。税額の計算は速算表に基づく概算であり、実際の税額は個人の状況により異なります。正確な判断は税理士にご相談ください。
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