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【税金入門 vol.7】給与所得控除とは — 会社員の「みなし経費」の金額と上限

# 税金入門# 所得税

会社員にも「経費」がある

「フリーランスは経費で節税できていいな」。会社員からよく聞くセリフですが、実は会社員にも経費に相当する仕組みがあります。

それが給与所得控除

年収に応じた額を差し引いてくれる制度で、領収書を集める必要も、確定申告で経費を計上する必要もない。会社員の税額計算に最初から組み込まれている「見えない経費」です。

【税金入門 vol.4】「収入」と「所得」は別モノ — 税金の基本で少し触れましたが、この記事では給与所得控除の金額・計算方法・上限を掘り下げます。

給与所得控除の考え方

会社員にも「仕事のためにかかるお金」はあります。通勤のための靴や服、仕事に必要な道具、取引先との付き合い。でもこれを一人ひとり計算して申告させるのは現実的じゃない。

そこで国は「年収がこれくらいなら、経費はこれくらいかかっているだろう」というみなし経費のテーブルを用意しました。これが給与所得控除。

給与収入 − 給与所得控除 = 給与所得

税金がかかるのは「給与所得」のほう。年収がそのまま課税されるわけではないんですよね。ここ、意外と知らない人が多いポイントです。

金額の早見表(2025年分)

年収(給与収入)給与所得控除額
162.5万円以下65万円(最低保障)
162.5万超〜180万円収入×40% − 10万円
180万超〜360万円収入×30% + 8万円
360万超〜660万円収入×20% + 44万円
660万超〜850万円収入×10% + 110万円
850万超195万円(上限)

計算式で出しにくいので、よくある年収で具体的な金額を並べます。

年収給与所得控除給与所得控除率
300万円98万円202万円32.7%
400万円124万円276万円31.0%
500万円144万円356万円28.8%
600万円164万円436万円27.3%
700万円180万円520万円25.7%
800万円190万円610万円23.8%
900万円195万円705万円21.7%
1,000万円195万円805万円19.5%
1,500万円195万円1,305万円13.0%

控除率の列を見てください。年収が上がるほど控除率は下がっていく。年収300万円なら収入の3割以上が控除されますが、年収1,500万円だと13%しか控除されません。

上限195万円の壁

給与所得控除で一番大事なポイントがここ。年収850万円を超えると、控除額は195万円で頭打ちになります。

年収850万でも1,000万でも1,500万でも2,000万でも、控除はずっと195万円のまま。

年収500万円
給与所得控除144万円
控除率28.8%
控除
課税対象
給与所得356万円
年収1,500万円
給与所得控除195万円
控除率13%
控除
課税対象
給与所得1305万円
年収3倍でも控除は1.35倍だけ。高年収ほど控除の恩恵が薄まる

これが「高年収ほど税負担が重い」と言われる理由のひとつ。【税金入門 vol.6】累進課税の仕組み — 「税率20%=全額に20%」の誤解を解くで解説した累進課税に加えて、給与所得控除の上限も効いている。ダブルパンチです。

年収1,000万円の人と年収500万円の人を比べると:

年収500万年収1,000万
給与所得控除144万円(28.8%)195万円(19.5%)
給与所得356万円805万円

年収は2倍ですが、給与所得は2.26倍。控除の恩恵が薄まるぶん、課税ベースの増え方が年収の増え方を上回る構造になっています。

年収850万円を超えると給与所得控除の節税効果は頭打ち。この構造から抜け出す方法のひとつが、マイクロ法人を設立して所得を分散させることです。

フリーランスの経費との比較

フリーランスには給与所得控除がありません。代わりに実額で経費を積みます。どちらが有利か、年収600万円で比べてみます。

会社員フリーランス(経費率25%)フリーランス(経費率10%)
収入600万円600万円600万円
控除/経費給与所得控除 164万円経費150万 + 青色65万 = 215万円経費60万 + 青色65万 = 125万円
所得436万円385万円475万円

経費率25%のフリーランスなら会社員より有利。でも経費率10%だと会社員のほうが所得が小さくなる。

ITコンサルやエンジニアのように原価がほぼかからない業種だと、経費率10%前後は珍しくない。「フリーランスは経費で得」というのは業種次第で、給与所得控除のほうが大きいケースも普通にあります。

特定支出控除 — 会社員が経費を上乗せできる唯一の方法

「給与所得控除の金額じゃ足りない」という場合、会社員でも実額で経費を上乗せできる制度があります。特定支出控除です。

対象になる支出

  • 通勤費: 会社が負担してくれない通勤費
  • 転居費: 転勤に伴う引越し費用
  • 研修費: 職務に直接必要な研修・講習の費用
  • 資格取得費: 業務に必要な資格の取得費用(弁護士、公認会計士など)
  • 帰宅旅費: 単身赴任者の帰宅にかかる旅費
  • 図書費・衣服費・交際費: 業務に必要な書籍・スーツ・取引先との会食(3つ合わせて上限65万円)

使える条件

特定支出の合計が給与所得控除の1/2を超えた場合に、超えた分だけ追加で控除できる仕組み。

年収500万円 → 給与所得控除144万円 → 1/2は72万円
→ 特定支出が80万円なら、80万 − 72万 = 8万円だけ追加控除

正直、ハードルはかなり高い。年収500万円の人なら72万円以上の特定支出がないと使えない。しかも会社の証明書が必要で、確定申告も必須。実際に使っている人はごくわずかです。

とはいえ、業務用の書籍や研修費が年間で多い専門職の方なら、一度計算してみる価値はあるかもしれません。

給与所得控除の「65万円最低保障」

パートやアルバイトで働いている人に関係するのが、最低保障額の65万円(2025年改正で55万円から引き上げ)。

年収が162.5万円以下なら、実際の年収に関係なく65万円が控除されます。つまり年収65万円以下なら給与所得はゼロ。所得税はかからない。

よく聞く「103万円の壁」、ここから来ています。

年収103万円 − 給与所得控除55万円 = 給与所得48万円
給与所得48万円 − 基礎控除48万円 = 課税所得ゼロ → 所得税ゼロ

これは改正前(2024年以前)の計算。2025年分は給与所得控除の最低額が55万→65万円に、基礎控除も引き上げられたため、非課税ラインは実質的に上がっています。「103万円の壁」という言葉は残っていますが、数字自体はもう変わっている点に注意してください。

自分の税負担、いくらか知っていますか?
所得の種類でこれだけ税額が変わるなら、自分の数字で確かめておいて損はありません。

この記事のまとめ

  • 給与所得控除は会社員の「みなし経費」。申告不要で自動適用
  • 年収に応じて65万〜195万円。年収850万超で上限195万円に到達
  • 年収が高いほど控除率が下がる → 高年収ほど税負担の割合が増える構造
  • フリーランスの実額経費と比べて有利かどうかは経費率次第
  • 特定支出控除で上乗せできるが、ハードルは高い

フリーランスとして独立を考えている方は、マイクロ法人を活用すると給与所得控除と法人経費の両方を使える構造を作れます。気になる方はシミュレーターで自分のケースを試算してみてください。

次の記事では、フリーランス側の所得計算 — 事業所得の仕組みに踏み込みます。売上から何を引けるのか、青色申告で65万円控除を取る条件は何か。


※ 本記事は2025年分の税制に基づく概要説明です。給与所得控除の金額は国税庁の速算表に準拠しています。個別の税額は個人の状況により異なります。正確な判断は税理士にご相談ください。

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