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【税金入門 vol.4】「収入」と「所得」は別モノ — 税金の基本

# 税金入門# 所得税

「年収500万円に税金がかかる」は間違い

税金の話をするとき、多くの人が「年収」に税率をかけて税額を出そうとします。でもこれ、根本的に間違っています。

税金は収入にかかるのではなく、所得にかかる

「収入」と「所得」 — 似ているようで意味がまったく違う。この違いを押さえないと、このあとの累進課税も控除も全部ぼやけます。まずここをはっきりさせましょう。

収入と所得の関係

シンプルな式で表すとこうなります。

収入 − 必要経費 = 所得
収入必要経費=所得
税金がかかるのは「所得」のほう
会社員
年収500万円
29%
71%
給与所得控除
1,440,000
みなし経費(自動適用)
所得
3,560,000
フリーランス
売上500万円
38%
62%
経費+青色控除
1,900,000
実額経費125万+青色控除65万
所得
3,100,000
※ 同じ年収500万でも、経費の引き方で所得(=課税対象)が変わる
  • 収入: 入ってくるお金の総額。会社員なら額面の年収、フリーランスなら売上のこと
  • 必要経費: その収入を得るためにかかったコスト
  • 所得: 収入から経費を引いた「もうけ」。税金はここにかかる

税金がかかるのは、この「もうけ」のほう。年収500万円の人が500万円まるごと課税されているわけではありません。経費を引いた残りに対して課税される。たったこれだけの話ですが、ここがぼやけていると控除も累進課税もピンとこなくなります。

会社員の場合:給与所得控除という「みなし経費」

「会社員は経費なんて計上してないけど?」と思いませんか。

その通り。会社員は領収書を集めて経費精算する必要がありません。代わりに給与所得控除という仕組みで、自動的に一定額が差し引かれます。

給与所得控除とは

会社員にも「仕事のためにお金がかかっている」という前提があります。スーツ代、通勤の靴、仕事に使う道具――。でもこれを一人ひとり計算するのは現実的じゃない。

そこで国は「年収がこれくらいなら、経費はこれくらいかかっているでしょう」というみなし経費のテーブルを用意しました。これが給与所得控除です。

金額の早見表(2025年分)

年収(給与収入)給与所得控除額
162.5万円以下65万円(最低保障)
162.5万超〜180万円収入×40% − 10万円
180万超〜360万円収入×30% + 8万円
360万超〜660万円収入×20% + 44万円
660万超〜850万円収入×10% + 110万円
850万超195万円(上限)

具体例で見る

年収500万円の会社員の場合:

給与所得控除 = 500万 × 20% + 44万 = 144万円
給与所得 = 500万 − 144万 = 356万円

年収500万でも、税金の対象になるのは356万円。ここからさらに各種控除(基礎控除、社会保険料控除など)が引かれて、最終的な課税所得はもっと小さくなります。控除の詳細は後の記事で扱います。

上限195万円の壁

ここ、地味に大事なポイントです。年収850万円を超えると、給与所得控除は195万円で頭打ち。年収1,000万でも1,500万でも控除は195万円のまま。高年収になるほど「みなし経費」の恩恵が薄れていく構造になっています。

これが「年収が上がるほど実効税率が高くなる」と言われる理由のひとつ。累進課税だけでなく、控除の上限も効いています。

フリーランスの場合:実額で経費を積む

フリーランスには給与所得控除がありません。代わりに、実際にかかった経費を自分で計上します。

売上600万 − 経費150万 = 事業所得450万

何が経費になるのか

事業に必要な支出であれば経費にできます。

  • PC・ソフトウェア: 仕事道具の定番
  • 家賃の一部: 自宅で仕事をしているなら按分で計上できる(例: 面積の30%を事業用 → 家賃の30%)
  • 通信費: スマホ代、インターネット代の事業利用分
  • 交通費: 取引先への移動にかかった実費
  • 書籍・セミナー: スキルアップのための投資として認められやすい

ポイントは「事業との関連性を説明できるかどうか」。プライベートの食事は経費にならないけど、取引先との打ち合わせ兼ねた会食なら経費になる。このあたりのグレーゾーンは別の記事で掘り下げます。

青色申告特別控除

フリーランスが青色申告をしていれば、最大65万円の特別控除も使えます。

売上600万 − 経費150万 − 青色控除65万 = 事業所得385万

これは経費ではなく「ちゃんと帳簿をつけているご褒美」みたいな制度。正直、65万円の控除はかなり大きいです。簿記の方式に応じて10万円・55万円・65万円の3段階があり、複式簿記+貸借対照表を添付した上でe-Taxで電子申告すれば最大の65万円。紙で申告すると55万円、簡易簿記なら10万円です。

会社員 vs フリーランス、同じ年収で比較

年収600万円で並べてみましょう。

会社員フリーランス(経費率25%)
収入600万円600万円
差し引くもの給与所得控除 164万円経費 150万円 + 青色控除 65万円
所得436万円385万円

この例だとフリーランスのほうが所得は小さくなります。ただし、ここには落とし穴がある。経費率が低い業種だと簡単に逆転します。

売上600万 − 経費60万 − 青色控除65万 = 事業所得475万(会社員の436万より多い)

ITコンサルのように原価がほぼかからない業種だと、経費率10%程度ということも珍しくありません。「フリーランスは経費で節税できる」とよく言われますが、実際に計上できる経費が少なければ会社員の給与所得控除のほうがお得なケースも普通にあります。自分の売上と経費でどちらが有利か、シミュレーターで具体的な数字を確認できます。

なぜこの違いが大事なのか

「収入と所得の区別」を知っていると、このあと出てくる話が全部つながってきます。

  • 累進課税: 税率がかかるのは「所得」。収入500万に最高税率がそのままかかるわけではない
  • 各種控除: 所得からさらに引けるもの(基礎控除、配偶者控除、医療費控除など)
  • 社会保険料: フリーランスの国保は「所得」ベースで決まる。年収が同じでも経費の多寡で保険料が変わるのはこのため
  • ふるさと納税の上限: これも「所得」がベース

「年収」だけ見ていると判断を誤ります。年収が同じでも、所得が違えば税額も社会保険料もまるで変わる。大事なのは常に「所得がいくらか」です。

この記事のまとめ

  • 収入 ≠ 所得。税金は所得(もうけ)にかかる
  • 会社員: 給与所得控除(みなし経費)が自動適用。年収850万超で上限195万円
  • フリーランス: 実額の経費 + 青色申告控除(最大65万円)
  • どちらが有利かは年収と経費率次第。まずは自分の経費率を確認するところから

次の記事では、所得の「種類」に踏み込みます。給与所得、事業所得、雑所得 — 全部で10種類ある所得は、それぞれ計算方法が違います。


※ 本記事は2025年分の税制に基づく概要説明です。給与所得控除の金額は国税庁の速算表に準拠しています。個別の税額は個人の状況により異なります。正確な判断は税理士にご相談ください。

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