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【税金入門 vol.8】事業所得の計算 — 売上−経費−青色控除。帳簿と証拠書類の基本

# 税金入門# 所得税

フリーランスの税金、計算の出発点

会社員なら年収から給与所得控除を引くだけです。【税金入門 vol.7】給与所得控除とは — 会社員の「みなし経費」の金額と上限で見たとおり、申告不要で自動的に処理される仕組みでした。

フリーランスはそうはいきません。自分で売上を集計し、経費を積み上げ、帳簿をつけて、確定申告で所得を計算します。手間はかかりますが、その分「自分でコントロールできる余地」があります。

事業所得の出し方、ここから整理していきます。

事業所得の計算式

事業所得 = 売上(収入金額)− 必要経費 − 青色申告特別控除
売上(収入金額)600万円
必要経費120万円
青色申告特別控除65万円
事業所得415万円

これだけです。シンプルに見えますが、「何が売上に含まれるか」「何が経費になるか」「青色控除を取るにはどうするか」で金額が大きく変わります。

【税金入門 vol.4】「収入」と「所得」は別モノ — 税金の基本で触れた「収入−経費=所得」の、フリーランス版がこれです。

売上(収入金額)に含まれるもの

フリーランスの売上は、事業として受け取ったお金のすべて。

  • クライアントからの報酬・業務委託料
  • 成果物の対価(デザイン、コード、原稿など)
  • アフィリエイト収入(事業として行っている場合)
  • 講演料、セミナー講師料

ポイントは発生主義。お金が振り込まれた月ではなく、「仕事が完了した月(役務を提供した月)」に売上を計上するのが原則です。12月に納品して1月に入金された報酬は、12月分の売上になります。ここを間違えると年をまたいだときに申告額がずれるので、納品日ベースで記録する癖をつけておきましょう。

必要経費 — 何が引けるのか

経費にできるのは「事業のために直接必要な支出」です。よく使われる科目はこのあたりです。

勘定科目具体例
通信費インターネット回線、携帯電話(事業使用分)
旅費交通費取引先への移動、出張
消耗品費PC周辺機器、文房具、10万円未満の備品
減価償却費PC(10万円以上)、カメラなど
地代家賃自宅の家賃(事業使用割合分)
水道光熱費電気代(事業使用割合分)
接待交際費取引先との飲食、手土産
新聞図書費業務関連の書籍、有料ニュース
外注費デザイナーやライターへの外注
支払手数料振込手数料、クラウドソーシング手数料

家事按分 — 自宅兼事務所のルール

フリーランスは自宅で仕事をしている人が多いです。家賃や光熱費の全額は経費にできませんが、**事業で使っている割合(按分率)**だけなら経費にできます。

家賃12万円 × 按分率30% = 経費3.6万円/月(年間43.2万円)
全額は経費にできない
家賃120,000円/月
全額1,440,000円は不可
事業使用分だけ経費にできる
30%
私用 70%
120,000円 × 30%36,000円/月
按分率は面積比 or 時間比で算出
年間の経費計上額
432,000

按分率の決め方に法律上の「正解」はありません。面積比(仕事部屋の割合)や時間比(1日のうち仕事に使う時間の割合)で合理的に説明できればOKです。ただし「なんとなく50%」だと税務調査で突っ込まれるので、根拠は記録しておきましょう。

経費にならないもの

  • 所得税、住民税(税金は経費にならない)
  • 国民年金、国民健康保険料(経費ではなく「社会保険料控除」で引く)
  • 生活費(食費、趣味の支出)
  • 家族への給与(原則。青色事業専従者給与は例外)
  • 罰金、反則金

「事業に関係ない支出」はどんなに高くても経費になりません。逆に「事業に直接必要」と説明できるなら、金額の大小は関係ありません。要は、事業との関連性がすべてです。

青色申告特別控除 — 最大65万円

経費を引いた後に、さらに65万円を差し引ける制度があります。これが青色申告特別控除です。

売上600万 − 経費120万 = 事業所得(青色控除前)480万
480万 − 青色控除65万 = 事業所得415万

65万円の控除は、実際にお金を使わなくても得られます。帳簿をきちんとつけるだけで、65万円分の経費と同じ効果です。所得税率20%の人なら所得税だけで約13万円、住民税10%分も含めると年間約19.5万円の節税になります。使わない手はありません。

65万円控除の条件

3つすべてを満たす必要があります。

  1. 複式簿記で帳簿をつけている
  2. 貸借対照表損益計算書を確定申告書に添付する
  3. e-Taxで電子申告する、または電子帳簿保存を行っている

3の条件を満たさない場合は55万円控除になります。控除額が10万円減る — 税率20%なら約3万円の増税です。たかが3万円と思うかもしれませんが、e-Taxは無料で使えるので、紙で出す理由はありません。

青色申告をするには

青色申告は勝手にできるものではなく、事前の届出が必要になります。

  • 開業届(個人事業の開業届出書)を税務署に提出
  • 青色申告承認申請書を、開業日から2か月以内(その年の1月15日までに開業した場合は3月15日まで)に提出

どちらもA4用紙1枚です。提出しないまま確定申告の時期を迎えると、その年は白色申告になり65万円の控除をまるごと失います。所得税率20%の人なら年間約19.5万円の損失。マネーフォワード クラウド開業届を使えば開業届と青色申告承認申請書をまとめて無料で作成・提出できます。独立を考えている方は、開業と同時に出すのが鉄則です。

白色申告との比較

青色申告(65万控除)白色申告
特別控除最大65万円なし
帳簿複式簿記簡易な記帳
届出事前に申請書が必要不要
赤字の繰越3年間繰越可能不可
貸倒引当金計上可能不可
専従者給与届出額まで全額経費配偶者86万円、その他50万円まで
白色申告
特別控除額
0円
帳簿義務あり(2014年〜)
青色申告おすすめ
特別控除額
65万円
複式簿記 + e-Tax
年間 約19.5万円 の節税効果
※ 所得税率20% + 住民税10%の場合

白色申告は帳簿が簡単ですが、65万円控除が使えない時点でほぼ一択です。2014年から白色申告でも帳簿の記帳・保存が義務化されたので、「帳簿をつけなくていいから白色」という理由はもう成り立ちません。

青色申告に切り替えないまま確定申告を迎えると、毎年65万円分の控除を捨てていることになります。会計ソフトを使えば複式簿記の知識がなくても青色申告はできます。freee会計なら銀行口座やクレジットカードを連携するだけで自動仕訳。簿記の知識ゼロでも65万円控除の条件を満たせます。

帳簿と証拠書類の保存

保存期間

書類保存期間
仕訳帳、総勘定元帳7年
損益計算書、貸借対照表7年
請求書、領収書7年(白色申告で前々年の所得300万以下なら5年)
契約書、見積書5年

電子帳簿保存法(2024年1月〜完全義務化)

地味に面倒なのがこの制度です。メールやクラウドサービスで受け取った請求書・領収書は、紙に印刷して保存するのではなく電子データのまま保存することが義務になりました。

  • PDFで受け取った請求書 → PDFのまま残す
  • メールに記載された取引情報 → メールまたはスクリーンショットで保管
  • クラウドサービスの利用明細 → データをダウンロードして保存

保存時には「日付・金額・取引先」で検索できる状態にしておかなければなりません。ファイル名を「20260315_50000_株式会社〇〇.pdf」のような規則にするか、会計ソフトで管理するか。どちらでもいいですが、ルールを決めて統一しておくのがコツです。

具体例で見る事業所得の計算

年間売上600万円、経費率20%のITフリーランスのケースで計算してみます。

項目金額
売上600万円
経費(通信費、PC、家賃按分など)120万円
差引金額480万円
青色申告特別控除65万円
事業所得415万円

この415万円に対して、さらに基礎控除や社会保険料控除などの「所得控除」を引いた金額が課税所得になり、【税金入門 vol.6】累進課税の仕組み — 「税率20%=全額に20%」の誤解を解くで解説した超過累進税率がかかります。

会社員の給与所得控除(年収600万なら164万円)と比べると、フリーランスの場合は経費120万+青色65万=185万円。控除額だけで見れば経費率20%ならフリーランスが有利です。ただし経費率が低い業種だと逆転するケースもあります — これは【税金入門 vol.7】給与所得控除とは — 会社員の「みなし経費」の金額と上限で比較した通りです。自分の売上と経費率で税負担がどう変わるか、シミュレーターに数字を入れてみると具体的なイメージがつかめます。

この記事のまとめ

  • 事業所得 = 売上 − 経費 − 青色控除。フリーランスの税金計算の出発点
  • 経費にできるのは「事業に直接必要な支出」。家事按分で自宅の家賃も一部OK
  • 青色申告で65万円控除。条件は複式簿記+e-Tax。届出は開業時に出すのが鉄則
  • 帳簿は7年保存。電子取引データの電子保存は2024年から義務化済み
  • 白色申告は帳簿義務化でメリットがほぼなくなった。青色一択

次の記事からは第3章「控除」に入ります。所得控除と税額控除 — 「所得から引く」のと「税金から引く」のでは効果がまったく違う、という話です。


※ 本記事は2025年分の税制に基づく概要説明です。青色申告特別控除の金額、帳簿保存義務は国税庁の規定に準拠しています。個別の経費判断や申告方法は税理士にご相談ください。

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