【税金入門 vol.18】確定申告が必要な人 — 会社員でも必要なケース
「年末調整があるから確定申告は不要」は半分正解
会社員は毎月の給与から所得税が源泉徴収され、年末調整で精算されます。だから「確定申告は自分には関係ない」と思っている人が多いです。
たしかに、給与所得だけで他に所得がなければ、年末調整で完結します。でも以下のどれかに該当すると、会社員でも確定申告が必要になります。意外と該当する人は多いんですよね。
確定申告が「必須」のケース
ここから挙げるケースに1つでも当てはまるなら、確定申告は必須です。出さないと無申告扱いになり、無申告加算税・延滞税の対象になります。
1. 副業の所得が20万円を超える
会社員が副業で得た所得(収入 − 経費)が年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。
ポイントは「収入」ではなく「所得」であること。副業の売上が50万円でも、経費が35万円かかっていれば所得は15万円。この場合、確定申告はいりません。
ただし、【税金入門 vol.17】特別徴収と普通徴収 — 天引きvs自分で納付。副業がバレる仕組みで解説したとおり、所得税の確定申告が不要でも住民税の申告は必要です。ここを忘れている人がとても多いので注意してください。
2. 給与収入が2,000万円を超える
年収2,000万円超の会社員は年末調整の対象外です。会社で年末調整をしてもらえないので、自分で確定申告する必要があります。該当する人は少数ですが、ルールとして知っておいて損はありません。
3. 2箇所以上から給与をもらっている
本業と副業の両方で「給与」をもらっている場合(ダブルワーク)、メインの会社以外の給与は年末調整されません。副業先の給与収入が年間20万円を超える場合は確定申告が必要になります。
業務委託ではなく「給与」として受け取っているかどうかがポイントです。源泉徴収票が出ていれば給与扱いと考えてください。
4. 退職所得を受け取って「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない
退職金を受け取る際に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していないと、退職金に対して一律20.42%の所得税が源泉徴収されます。本来の税額より多く取られているケースがほとんどなので、確定申告で精算すれば差額が戻ってきます。
5. 株式や不動産の譲渡益がある
特定口座(源泉徴収あり)を使っていれば確定申告は不要ですが、一般口座や特定口座(源泉徴収なし)で株式を売却して利益が出た場合は申告が必要です。不動産を売却した場合も同様になります。
確定申告をすると「得する」ケース
ここからは「やらなくてもペナルティはないけど、やれば税金が戻ってくる」ケースです。還付申告と呼ばれます。
正直、知らずに放置している人がかなりいます。もったいないです。
1. 医療費が年間10万円を超えた
【税金入門 vol.12】医療費控除 — 10万円の壁とセルフメディケーション税制で解説したとおり、医療費控除は年末調整では受けられません。確定申告が必要です。
家族全員の医療費を合算できるので、意外と10万円を超えるケースは多いんですよね。入院・出産・歯科治療があった年は必ずチェックしておきましょう。
2. 住宅ローン控除の1年目
【税金入門 vol.13】住宅ローン控除 — 税額控除の破壊力。適用条件と13年間の仕組みで解説したとおり、住宅ローン控除は1年目だけ確定申告が必要です。2年目以降は年末調整で受けられます。
控除額は年間最大31.5〜35万円(住宅の種類による)。これを受け取らずに放置するのはさすがにもったいないので、面倒でも1年目は必ず確定申告してください。
3. ふるさと納税でワンストップ特例を使えなかった
【税金入門 vol.11】ふるさと納税の仕組み — 実質2,000円の理由と上限額の計算で解説したとおり、以下のどれかに該当するとワンストップ特例が使えないため、確定申告が必要になります。
- 寄附先が6自治体以上
- 他の理由で確定申告が必要(医療費控除、副業所得の申告等)
- ワンストップ特例の申請期限(翌年1月10日)を過ぎた
ワンストップ特例を申請済みでも、確定申告をするとワンストップ特例は無効になります。確定申告する場合は、ふるさと納税の全寄附額を申告に含めてください。ここ、地味に見落としやすいポイントです。
4. 年の途中で退職して再就職していない
年末調整は12月末時点で在籍している会社で行われます。年の途中で退職してそのまま年末を迎えた場合、年末調整が行われないので確定申告で所得税を精算します。
多くの場合、源泉徴収で払いすぎた税金が戻ってきます。退職が年の前半だった場合は特に還付額が大きくなりやすいので、忘れずに申告してください。
5. 災害・盗難にあった(雑損控除)
自然災害、火災、盗難などで資産に損害を受けた場合、雑損控除を受けられます。年末調整では対応できないため、確定申告が必要です。
フリーランスは全員確定申告が必要
会社員と違って、フリーランス(個人事業主)は全員が確定申告の対象です。年末調整をしてくれる会社がないので、自分で所得を計算して申告します。フリーランスとマイクロ法人でどれくらい税負担が変わるか気になる方は、ZeiSimのシミュレーターで比較できます。
【税金入門 vol.8】事業所得の計算 — 売上−経費−青色控除。帳簿と証拠書類の基本で解説したとおり、青色申告で65万円の控除を受けるには複式簿記での帳簿づけが必要です。白色申告でも記帳義務はあるので、帳簿なしで申告するのはNGになります。
申告期限と還付申告の期限
還付申告は5年間遡れます。「去年の医療費控除を忘れていた」という場合でも、まだ間に合う可能性があります。
通常の確定申告の期限(3月15日)を過ぎると、無申告加算税や延滞税がかかる場合があります。2月に入ったら着手するくらいでちょうどいいです。
確定申告の書類作成は、会計ソフトを使えば画面の案内に沿って進められます。
よくある間違い
「副業が20万円以下なら何もしなくていい」
所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。住民税には20万円以下の免除規定がありません。住民税の申告をしないと、後から自治体から問い合わせが来ることがあります。
「確定申告の期限を過ぎたら還付は受けられない」
還付申告は3月15日の期限とは関係ありません。翌年1月1日から5年間有効です。過去に医療費控除やふるさと納税の申告を忘れていた場合でも、5年以内なら遡って申告できます。
「年末調整で全部処理されているはず」
年末調整で処理できるのは、生命保険料控除・地震保険料控除・住宅ローン控除(2年目以降)・配偶者控除・扶養控除など一部の控除のみ。医療費控除・雑損控除・寄附金控除(ふるさと納税含む)は年末調整では対応できません。
この記事のまとめ
- 副業所得20万円超、年収2,000万円超、2箇所給与は確定申告が必須
- 医療費控除、住宅ローン控除1年目、ふるさと納税は確定申告で還付を受けられる
- 年の途中で退職した人は確定申告で払いすぎた税金が戻る可能性が高い
- フリーランスは全員確定申告が必要
- 還付申告は5年間遡れる。忘れていても諦めないでください
- 副業20万以下でも住民税の申告は必要
次の記事では、確定申告の具体的なやり方を解説します。e-Taxの始め方、必要書類、提出の流れまで。
※ 本記事は2025年分の税制に基づく概要説明です。確定申告の要否は個人の状況により異なります。正確な判断は税理士にご相談ください。
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